第5章転職と年齢|年齢制限禁止のルールと現実の壁
この章の要点
- 募集・採用で年齢を条件にすることは、法律で原則禁止されています(2007年10月施行)。例外もあります。
- ルールがあっても、選考の結果に年齢が影響しないとは言えません。ここは不利な面として、隠さずに書きます。
- 年齢は変えられません。変えられるのは「経験の年数」ではなく「何ができて、何を成したか」の見せ方です。
年齢制限のルール
労働施策総合推進法により、事業主は労働者の募集・採用で、年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならないとされています。ハローワークだけでなく、民間の職業紹介事業者、求人広告、企業の直接募集にも広く適用され、正社員・パート・派遣などの雇用形態を問いません(ハローワークの案内)。
例外は、次のような場合に限られます。
- 定年年齢を上限として、それ未満の人を期間の定めのない契約で募集する場合
- 法令で年齢制限が定められている場合
- 長期勤続によるキャリア形成のため、若い人を期間の定めのない契約で募集する場合(上限年齢のみを設定できる。理由の明示が必要)
- 技能・ノウハウの継承のため、特定の年齢層を対象に募集する場合
- 芸術・芸能の分野で、表現の真実性のために必要な場合
- 高年齢者などの雇用を促進する国の施策に基づく場合
求人票に「35歳まで」などと書かれていても、例外にあたる理由が明示されているか、確かめられます。疑問があれば、ハローワークや労働局に相談できます。
ルールの限界
年齢制限が禁止されていても、次のことは起きうる、と言われます。
- 求人票に年齢は書かれないが、「若手中心のチーム」「30代までの活躍を期待」など、実質的に年齢層を想定した書き方がされる。
- 書類選考で、職務経歴書の経験年数や年収から、年齢が推測される。
- 結果として、年齢が上がるほど応募先が絞られ、書類が通りにくくなる。
こうした実態を、個別の選考の理由まで含めて示す一次の統計は、このサイトでは確認できていません。数字で断定せず、自分の応募の結果を記録して、実際に確かめます(第17章)。
賃金は年齢でどう動くか
賃金構造基本統計調査(令和6年)では、男性は55〜59歳の444.1千円がピークで、20〜24歳を100とすると189.6でした。女性は45〜49歳の298.0千円がピークです。つまり、多くの会社の賃金表は年齢とともに上がる形で、中高年を採用する企業は、その賃金に見合う成果を求めます。
一方、転職入職者の賃金は、前の職場より増えた人が40.5%、減った人が29.4%でした(令和6年、雇用動向調査)。年齢別の内訳は、この章では扱っていません。年齢が上がるほど、賃金が上がる転職は、経験・役職・専門性が合う場合に絞られやすい、というのが一般的な見方です。
年齢が高い=給与が高い、とは限らない
賃金表は年齢とともに上がる会社が多い一方で、需要が強い分野では、若い人や学歴の高い人のほうが高く評価される場合があります。
- 技術の需要:AI・データ・半導体など、人材が足りない分野では、経験年数より専門性が値段を決めます。専門を修めた若い人材が、年上の経験者より高い給与で迎えられることがあります。
- 学歴:賃金構造基本統計調査の学歴別初任給では、大学院修士課程修了の初任給が大学卒より高くなっています。さらに、博士(たとえば物理学)の人材に、修士より高い初任給を設けたと報じられている例もあります(個別の会社は挙げません。数字と最新の状況は、統計や各社の募集で確かめてください)。
- 含意:自分の年齢だけでなく、自分の技術が今の市場で求められているかを見ます(第6章、第8章)。年齢の差を、そのまま年収の差と決めつけません。
対処は、需要の強い分野へ学び直して移る(第7章。ただし、実務経験を問われる点に注意)、経験と知識が価値になる市場(業界知識・管理・調整が評価される職種)を選ぶ、の二方向があります。どちらが向くかは、自分の条件で決めます。
年齢の見せ方を変える
| 場面 | 避けたい書き方 | 変える方向 |
|---|---|---|
| 職務経歴書 | 「〇年間営業を担当」(年数だけ) | 「新規○社開拓、売上○%増」(成果と規模) |
| 面接 | 「経験が長いので何でもできます」 | 「〇〇の課題に、△△の方法で対処した経験があります」 |
| 年収の希望 | 今の年収と同じ額 | 応募先の相場と、自分が出せる成果から |
| 学び直し | 経験だけに頼る | 新しい分野の学習を具体的に示す(第7章) |
面接で年齢の壁を聞かれたときの答え方は第16章にあります。
「まだ間に合う」「もう遅い」と言い切らない
年齢についての言葉は、どちらにも偏ります。「何歳でも大丈夫」も「35歳が限界」も、一般論で決められません。決めるのは、自分の職種・地域・経験で、実際の応募と面接の結果です。結果が少ないうちは、応募数を増やして、記録から判断します。
相談先
- ハローワーク(年齢制限の疑問、職業相談)
- 労働局の雇用環境・均等部(室)(募集・採用で年齢制限の疑いがあるとき)
- 転職エージェントの面談(年齢別の見立ては担当者で違うため、複数で比べる)
この章で記録しておくこと
- 応募先ごとの年齢に関する記載(求人票の文言)と、結果
- エージェントに言われた年齢についての見立て(誰・いつ・何と)
- 応募数と、書類通過数・面接数(年齢の影響を自分で見るため)
この章のチェックリスト
- 年齢制限は原則禁止で、例外があることを知った
- 年齢の例外が書かれた求人は、理由の明示を確かめた
- 職務経歴書の年数中心の書き方を、成果中心に見直す
- 応募数と書類通過数を記録している
- 年齢についての見立ては、複数の人から聞いて比べた
事実の確認表
| 主張 | 出典 | 確認日 |
|---|---|---|
| 募集・採用の年齢制限は原則禁止(平成19年10月施行)。例外事由は省令に定められている | ハローワークインターネットサービス「募集・採用における年齢制限禁止」https://www.hellowork.mhlw.go.jp/enterprise/age_limit.html(原本を読んで確認) | 2026-09-30 |
| 男性の賃金は55〜59歳で444.1千円がピーク(20〜24歳=100で189.6)、女性は45〜49歳298.0千円がピーク(2024年) | 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況」https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/dl/02.pdf | 2026-09-30 |
| 転職入職者の賃金は増加40.5%・減少29.4%(令和6年) | 厚生労働省「令和6年雇用動向調査」https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/25-2/dl/siryo.pdf | 2026-09-30 |
| 大学院修士課程修了の初任給が大学卒より高い(学歴別初任給の表)、博士に高い初任給を設ける例が報じられている | 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」学歴別初任給 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html(最新の数字は原表で確かめてください)。博士の初任給の報道は個別の記事を確認しておらず、「報じられている例」として紹介 | 2026-09-30 |
| 年齢が上がるほど選考が厳しくなる実態、求人票の暗黙の年齢層 | 経験則・一説。「〜と言われる」として紹介 | 2026-09-30 |
参考にした記事
- 労働調査会「年齢制限は禁止?」https://www.rodo.co.jp/faq/102465/(年齢制限禁止の解説)