第6章転職のスキルの棚卸し|技術を証拠つきで書き出す方法
この章の要点
- 技術は「できること」を、場面・行動・結果の3点セットで書き出します。結果は数字にします。
- 専門スキルと、どの職場でも通じる汎用スキルの両方を分けて書き、求人票の必須条件と照らし合わせます。
- 資格は補助的な証拠です。実務の証拠がない資格だけでは、評価されにくいことがあります。
棚卸しの手順
- 仕事を全部書く:今の職場と過去の職場で担当した仕事を、思いつくまま書きます。小さな仕事も入れます。
- 1つずつ「場面・行動・結果」で書く:どんな状況で、自分が何をして、どうなったか。
- 結果を数字にする:売上、件数、時間、コスト、人数、期間。正確な数字が出ないときは、概算でよいので幅で書き、概算と分かるようにします。
- 専門か汎用かに分ける(次の表)。
- 求人票と照らし合わせる:応募したい求人の「必須」「歓迎」の条件に、自分の項目を対応させます。
書き出しの表
| 場面(状況) | 行動(自分がしたこと) | 結果(数字) | 種類 |
|---|---|---|---|
| 例:月次決算の締めが遅れていた | 例:入力手順を見直し、チェック表を作った | 例:締めが5営業日→3営業日 | 専門(経理) |
| 例:新人の教育担当になった | 例:週1回の面談と手順書を作った | 例:3人全員が半年で独り立ち | 汎用(育成) |
専門スキルと汎用スキル
- 専門スキル:職種で必要な、手を動かす能力。経理の決算、プログラミング、設計、営業の商談、法務の契約審査など。同じ職種の求人に直接つながります。
- 汎用スキル:職種を越えて通じる能力。課題を整理する、関係者を調整する、人を育てる、数字で説明する、期限を守って進める。異なる職種へ移るときの根拠になります。
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)では、職業ごとに、仕事の内容、求められるスキル・知識、統計上の賃金などを調べられます。自分の仕事を、公的な職業の分類に当てはめて見ると、求人票の言葉と自分の言葉を合わせやすくなります。
求人票と照らし合わせる
求人票の条件には、「必須」と「歓迎」があります。
- 必須の条件が満たせないと、書類が通りにくくなります。
- 歓迎の条件は、満たせなくても応募できますが、満たすほど有利になります。
- 一部の条件が満たせなくても、他の強みで補える場合があります。応募してよいかは、エージェントやハローワークに聞けます。
自分の項目を並べた表に、応募したい求人3〜5件の必須条件を書き足し、何割を満たすかを見ます。大半を満たすなら書類は通る可能性があり、半分以下なら、条件を見直すか、技術を補う(第7章)ことを考えます。
資格の位置づけ
資格は、知識や技術の一定の水準を示す証拠になります。ただし次の点に注意します。
- 業務独占資格(その資格がないとできない仕事)は、必須の条件になることがある。
- それ以外は、実務経験の裏づけがあって初めて評価される例が多い、と言われる。
- 資格の勉強の費用は、教育訓練給付の対象になる講座もある(第7章)。
AIで棚卸しを手伝ってもらうプロンプトの例
ChatGPT・Gemini・Claudeなどの対話型AIに、質問役をしてもらうと、自分では気づかない経験を掘り起こしやすくなります。次の文を貼り付け、〔 〕の中を自分の情報に置き換えて使います。
あなたはキャリアカウンセラーです。私のスキルの棚卸しを手伝ってください。
私は〔40〕歳で、〔業種〕の会社で〔15〕年働いてきました。主な経歴は次のとおりです。
〔例:営業5年→営業企画5年→課長5年〕
進め方:
1. 経歴の時期ごとに、私に質問を3つずつしてください。担当した業務、関わった人数、扱った金額や件数、使った道具、難しかったことと工夫を聞き出してください。一度に聞くのは1問ずつにしてください。
2. 私の答えから、成果を数字で表せるものを見つけ、「前→後」の形で書き直してください。数字がないものは、変化を具体的な言葉で書いてください。
3. 最後に、スキルを「どこでも通じる力」「専門の知識・技術」「資格・ツール」の3つに分けて表にしてください。
4. 社内用語や自社のシステム名は、他社の人にも通じる一般的な言葉に言い換えてください。
注意:私が言っていない経験や数字を作らないでください。分からないところは質問してください。
うまく引き出せたら、続けて次のように頼むと、応募先に合わせた整理ができます。
次の求人票の「必須」と「歓迎」の条件に、さきほどの棚卸しのどの経験が当てはまるかを表にしてください。当てはまらない条件は、どう補えるか(学ぶ・近い経験で説明する)も書いてください。
〔求人票の本文を貼り付け〕
AIに入れてはいけないもの:今の会社・前の会社の社外秘の情報(顧客名、取引条件、売上の内訳、社内の数字など)、同僚や取引先の個人情報、自分のマイナンバーや口座番号。数字は割合や規模感に置き換えて入れます。AIの出した文は、事実と違う点や盛りすぎた表現がないか、必ず自分で確かめてから使います。
相談先
- ハローワークの職業相談・職業訓練の案内
- 転職エージェントのキャリア面談(複数社で見立てを比べる)
- 職業情報提供サイト(job tag)
この章で記録しておくこと
- 棚卸しの表(日付つき)。更新のたびに版を残す
- 応募先の必須・歓迎条件と、自分の充足度
- 他人(上司・同僚・エージェント)から聞いた自分の強み
この章のチェックリスト
- 担当した仕事を全部書き出した
- 1つずつ「場面・行動・結果」で書いた
- 結果を数字にした(概算は概算と分かるように)
- 専門スキルと汎用スキルを分けた
- 応募先の必須条件に対する自分の充足度を見た
- AIを使う場合は、社外秘を入れていない
事実の確認表
| 主張 | 出典 | 確認日 |
|---|---|---|
| job tagで職業ごとの情報が調べられる | 厚生労働省 職業情報提供サイト https://shigoto.mhlw.go.jp/User(サイトの存在を確認) | 2026-09-30 |
| 場面・行動・結果の書き方、専門・汎用の分け方、資格の評価 | 一般的な整理(経験則)。「〜と言われる」として紹介 | 2026-09-30 |
参考にした記事
- (一般的な整理のため、特定の記事は参考にしていない)