第18章転職の内定後|労働条件通知書の確認と年収交渉・辞退
この章の要点
- 内定の承諾は、口頭ではなく、書面(労働条件通知書)の内容を確かめてから決めます。退職の手続きを始める前に確認します。
- 年収の交渉は、内定の後、承諾の前に行います。根拠は、成果の数字と相場です。
- 複数の内定があるときは、条件の表で比べます。承諾の期限は、自分で確かめ、必要なら延ばせるか相談します。
労働条件通知書
使用者は、労働契約を結ぶときに、賃金・労働時間などの労働条件を書面などで示す義務があります(労働基準法)。示すべき事項には、次のものが含まれます。
- 契約期間(期間の定めの有無、更新の基準)
- 就業の場所と、従事する業務(変更の範囲を含む)
- 始業・終業の時刻、休憩、休日、時間外労働の有無
- 賃金(基本給・手当・賞与の別、締め日・支払日)
- 退職に関する事項
2024年4月から、就業場所・業務の変更の範囲の明示が加わりました(厚生労働省)。転勤・異動の可能性を、書面で確かめます。
確認の表
内定後、通知書と、求人票・面接での説明を照らし合わせます。
| 項目 | 求人票・面接での説明 | 通知書の記載 | 違い |
|---|---|---|---|
| 年収・基本給 | |||
| 固定残業代(有無・時間) | |||
| 賞与 | |||
| 就業場所・変更の範囲 | |||
| 業務内容・変更の範囲 | |||
| 試用期間・その間の待遇 | |||
| 休日・残業 | |||
| 入社日 |
違いや不明点は、承諾の前に、書面(メール)で質問し、回答も記録します。口頭の約束は、後で確かめにくくなります。
年収交渉
いつ
内定の提示のあと、承諾の前。承諾したあとに条件を変えるのは難しくなります。
根拠
伝え方の例
内定をいただき、ありがとうございます。前向きに検討しています。
年収について、○○万円を希望しています。
これまで○○で○○の成果を出した経験を、貴社で活かせると考えているためです。
ご検討いただけますでしょうか。
- エージェント経由なら、交渉を任せられます。希望額と、譲れる下限を、先に伝えます(第12章)。
- 交渉で必ず上がるとは限りません。金額以外(入社日、在宅の日数、手当、賞与の初年度)で調整する方法もあります。
- 交渉の結果、条件が上がらなかったからといって、内定が取り消されることは通常ありません。ただし、無理な要求や言い方は、印象を左右する場合があります。
複数の内定を比べる
| 比べる項目 | A社 | B社 |
|---|---|---|
| 年収(内訳・固定残業代) | ||
| 場所・通勤・在宅 | ||
| 仕事内容・成長 | ||
| 働き方(残業・休日) | ||
| 会社の安定・将来性 | ||
| 譲れない線に合うか |
第2章で決めた「譲れない線」を満たすものを先に残します。同点のときは、優先順位が高い項目で決めます。承諾の期限は、企業に確認し、複数を比べる時間が要るなら、延ばせるか相談します。
承諾・辞退の伝え方
承諾:条件を確かめたうえで、書面(メール)で。入社日を確認します。
辞退:分かった時点で、早めに、応募先とエージェントに連絡します。
このたびは内定をいただき、ありがとうございました。
慎重に検討した結果、誠に勝手ながら、今回は辞退させていただきます。
貴重なお時間をいただきましたことに、心より感謝申し上げます。
理由は、簡潔で構いません。詳細を話す義務はありません。
内定取消・条件変更への備え
内定を取り消す場合、企業に客観的に合理的な理由と、社会的な相当性が求められる、というのが一般的な考え方です(労働契約法第16条の考え方が、判例で内定にも及ぶとされている)。個別の判断は、弁護士や労働局に相談します。
- 内定通知書・労働条件通知書は、保存する。
- 現職を辞める前に、条件を書面で確かめる。入社日が近づく前に退職の手続きを進める場合、内定の取消や条件変更のリスクを、頭に置く。
相談先
この章で記録しておくこと
- 内定の日時・提示された条件・回答期限
- 労働条件通知書の保存と、確認の表
- 交渉の内容(希望額・根拠・企業の回答)と日時
- 辞退する場合は、連絡した日時と相手
この章のチェックリスト
- 労働条件通知書(または同等の書面)を受け取った
- 求人票・面接の説明と、通知書を照らし合わせた
- 就業場所・業務の変更の範囲を確かめた
- 年収の交渉は、承諾の前に行った
- 複数の内定は、表で比べた
- 承諾の前に、退職の手続きを始めていない
- 内定通知書と通知書を、保存した
事実の確認表
| 主張 | 出典 | 確認日 |
|---|---|---|
| 労働契約の締結時に、賃金・労働時間などの労働条件を書面等で明示する義務がある(労働基準法第15条) | e-Gov法令検索 労働基準法 https://laws.e-gov.go.jp/ (条文は各自で確かめてください) | 2026-09-30 |
| 2024年4月から、労働条件の明示に就業場所・業務の変更の範囲が加わった | 厚生労働省・静岡労働局の案内 https://jsite.mhlw.go.jp/shizuoka-roudoukyoku/roudoukyoku/roudou/kantoku_00065.html (令和6年4月の明示事項の追加:就業場所・業務の変更の範囲、更新上限、無期転換。検索結果の要約で確認) | 2026-09-30 |
| 内定取消に客観的合理的理由・社会的相当性が求められる | 判例の一般的な考え方(個別の判断は弁護士・労働局へ)。判例名は原本未確認のため挙げない | 2026-09-30 |
| 年収交渉の時期・伝え方 | 一般的な整理(経験則) | 2026-09-30 |
参考にした記事
- (一般的な整理のため、特定の記事は参考にしていない)