第19章転職の退職手続き|切り出し方・退職日・有給・失業給付
この章の要点
- 退職は、内定の条件を書面で確かめてから切り出します。切り出す相手は、まず直属の上司が一般的です。
- 期間の定めのない雇用では、民法上、退職の申し入れから2週間で契約を終えられますが、就業規則の定めと引き継ぎを考え、多くは1〜2か月前に伝えます。
- 有給休暇の消化、引き継ぎ、競業の制限、社会保険の切り替えを、事前に確かめます。
退職の流れ
- 内定の条件を書面で確かめる(第18章)。
- 就業規則で、退職の申し出の時期・手続きを確かめる。
- 直属の上司に、口頭で伝える。
- 退職願・退職届を出す(会社の様式に従う)。
- 引き継ぎ、有給の消化。
- 退職日に、返却物・受け取る書類の確認。
切り出し方
- 最初は、直属の上司に、個別に、時間をとってもらう。同僚や取引先に先に話さない。
- 理由は、簡潔に。前向きな理由(「新しい分野に挑戦したい」)で足り、会社への不満を並べる必要はありません。
- 引き止め(給与の提示、異動の提案)を受けることがあります。その場で答えず、決めていることを丁寧に伝えます。引き止めを受け入れて残る場合の条件は、書面で確かめます。
お時間をいただき、ありがとうございます。
このたび、○月○日付で退職したく、ご相談します。
新しい環境で、○○に挑戦したいと考えています。
引き継ぎは、○月○日までに責任をもって行います。
退職日の決め方
- 民法:期間の定めのない雇用契約は、労働者が解約の申し入れをしてから2週間で終了します(民法第627条)。
- 就業規則:「1か月前までに申し出る」など、これより長い期間を定めている会社があります。法的な扱いは個別に異なるため、疑問があれば労働局の総合労働相談コーナーなどに確認します。
- 実務:引き継ぎと、有給の消化、新しい会社の入社日を合わせて決めます。入社日が決まっているなら、そこから逆算します。
- 期間の定めのある契約(契約社員など)は、契約期間の途中で辞められるかが別に決まります。契約書と、労働局への相談で確かめます。
有給休暇の消化
- 有給休暇は、労働者の権利です(労働基準法第39条)。会社は、事業の正常な運営を妨げる場合に、時季を変更できる権利(時季変更権)を持ちます。ただし、退職日を過ぎた日に有給を移すことはできないため、退職日が決まっている場合は変更しにくい、という考え方が一般に示されています。個別の扱いは、労働局に相談します。
- 引き継ぎの計画に、有給の日数を織り込みます。
- 有給の残日数は、給与明細や勤怠システムで確かめます。
引き継ぎ
- 業務の一覧、進行中の案件、関係者、資料の場所を、文書にまとめる。
- 顧客・取引先への挨拶は、上司と相談して、順序を決める。
競業の制限・秘密保持
- 就業規則や誓約書に、退職後の競業(同業他社への就職)の制限や、秘密保持の義務が書かれている場合があります。
- 競業の制限が有効とされるかは、期間・地域・職種・代償の有無などで、個別に判断が分かれます。サインする前に、内容を確かめ、疑問があれば弁護士・労働局に相談します。
- 顧客リスト・社内の資料を、持ち出さない。
失業給付との関係
転職先が決まっていて、間を空けずに入社する場合、失業給付は原則として受けられません。間が空く場合、または入社までの期間が長い場合は、次の点を確かめます。
- 自己都合の退職には、原則1か月の給付制限があります(離職日が令和7年4月1日以降。過去5年に2回以上の自己都合離職は3か月)。
- 離職票の発行、ハローワークでの手続きの期限があります。
- 給付を受けるには、就職する意思と、ハローワークでの求職の手続きが必要です。
退職時の手続きの表
| 項目 | 内容 | 期限の目安 |
|---|---|---|
| 離職票 | 失業給付を受ける場合に必要。会社に請求 | 退職後、早めに |
| 源泉徴収票 | 新しい会社での年末調整に使う | 退職後1か月以内に交付が一般的 |
| 雇用保険被保険者証 | 転職先に提出 | 入社時 |
| 年金手帳・基礎年金番号 | 転職先に提出 | 入社時 |
| 健康保険証 | 退職日に返却 | 退職日 |
| 社会保険の切り替え | 転職先が決まり、間が空かない場合は、転職先で加入 | 入社日 |
| 住民税 | 退職時期により、一括徴収または普通徴収への切り替え | 退職前に確認 |
間が空く場合は、国民健康保険・国民年金への加入、健康保険の任意継続の手続きの期限(任意継続は退職日の翌日から20日以内、国民健康保険・国民年金は14日以内が一般的な目安)があります。市区町村・協会けんぽ・日本年金機構の案内で、最新の期限を確かめます。
企業型確定拠出年金(企業型DC)の移換
今の会社で企業型DCに入っている人は、退職で加入者の資格を失います。資格を失ってから6か月以内に、iDeCo(個人型)や転職先の企業型DC・企業年金に資産を移す手続きをしないと、国民年金基金連合会に自動移換されます。
自動移換されると(厚生労働省の案内) - 資産の運用が行われなくなる - 管理手数料がかかり続ける - 自動移換の期間は、老齢給付金を受け取るための加入期間に数えられず、受け取れる年齢が遅くなることがある
自動移換にかかる手数料(国民年金基金連合会、2026年4月1日改定後) - 自動移換されるとき:4,348円 - 自動移換されてから4か月後以降:月98円 - 自動移換からiDeCoなどへ移すとき:550円
転職先に企業型DCがあるか、ないときはiDeCoへ移すかを、入社前後に確かめます。手続きには時間がかかることがあるので、退職の日が決まったら早めに、今の会社の担当者や運営管理機関に、移換の方法を聞きます。
相談先
この章で記録しておくこと
- 退職を伝えた日時・相手・話した内容
- 退職日・有給の残日数・消化の予定
- 引き継ぎの資料と、渡した相手・日付
- 会社から受け取った書類と日付
- サインした誓約書の内容(写しを保存)
この章のチェックリスト
- 内定の条件を書面で確かめてから切り出した
- 就業規則の退職の申し出の時期を確かめた
- 直属の上司に、最初に、個別に伝えた
- 退職日と入社日を合わせた
- 有給の残日数と消化の予定を確かめた
- 引き継ぎの文書を作った
- 誓約書は、サインする前に内容を確かめた
- 受け取る書類(離職票・源泉徴収票など)を確認した
- 企業型DCに入っている場合、6か月以内の移換の手続きを確かめた
事実の確認表
| 主張 | 出典 | 確認日 |
|---|---|---|
| 期間の定めのない雇用は、解約の申し入れから2週間で終了する(民法第627条第1項) | e-Gov法令検索 民法 https://laws.e-gov.go.jp/ (条文は各自で確かめてください) | 2026-09-30 |
| 年次有給休暇は労働基準法第39条に定められている | e-Gov法令検索 労働基準法 https://laws.e-gov.go.jp/ | 2026-09-30 |
| 自己都合離職の給付制限は原則1か月(離職日が令和7年4月1日以降)、過去5年に2回以上で3か月 | ハローワークインターネットサービス「よくある質問」https://www.hellowork.mhlw.go.jp/help/question08.html | 2026-09-30 |
| 任意継続20日・国民健康保険14日・国民年金14日の期限 | 一般的な目安(各制度の案内で、最新を確かめてください)。一般的な目安 | 2026-09-30 |
| 企業型DCは資格喪失後6か月以内に移換の手続きをしないと自動移換され、運用されず手数料がかかる | 厚生労働省「離職・転職時等の年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/portability.html (内容は、別のサイトの調査で原本を読んで確認した内容の再掲) | 2026-09-30 |
| 自動移換の手数料(新規4,348円、月98円、移換550円。2026年4月1日改定) | 国民年金基金連合会 https://www.ideco-koushiki.jp/library/pdf/tesuuryoukaitei202604.pdf (原本を読んで確認した内容の再掲) | 2026-09-30 |
| 競業の制限の有効性は個別判断 | 一般論。個別の判断は弁護士・労働局へ | 2026-09-30 |
参考にした記事
- (一般的な整理のため、特定の記事は参考にしていない)